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フランスの結婚制度と離婚制度について

フランスの結婚制度と離婚制度について

公開日
2025/01/22  
ホットトピックス

結婚制度

フランスの結婚制度を以下の順に説明していきます。

①結婚の条件
②必要書類
③結婚の流れ
④結婚契約(婚前契約)について
⑤パートナーシップ制度PACS(Le pacte civil de solidarité)について

結婚の条件について

同性間の結婚も認められています(フランス民法143条)。
年齢的には、原則として18歳以上であることが必要ですが(フランス民法144条)、重大な事由がある場合(女性の妊娠など)、検察官が認めて、かつ、親の同意がある場合は、例外的に、18歳未満で婚姻することも可能とされています(フランス民法145条、148条)。
重婚は禁止されています(フランス民法147条)。
再婚禁止期間は現在の法律においては存在しません。
ちなみに、フランスでは夫婦別姓制度が採用されています。

必要書類について

身分証明書、1か月以上前の住所または居住証明書、出生証明書、その他ケースに応じて必要書類が異なります。(例えば、出生証明書、婚姻契約を結んでいる場合は公証人の証明書など)
フランス政府のホームページで、それぞれ場合にどのような書類が必要になるかのシミュレーションを行うことができます。
https://www.service-public.fr/simulateur/calcul/ListeDocumentsPourMariage

結婚の流れについて

結婚成立までの流れは、概ね以下のとおりです。

①証人の手配(2名~4名、18歳以上、国籍は関係なし、結婚式の前までに手配)(フランス民法74条の1、75条)

②市役所の入り口に配偶者の氏名など必要事項を10日間に渡り掲示し異議申し立てがないかを確認(フランス民法63条、64条)

③担当官によるインタビュー(フランス民法63条)

④夫婦いずれかに縁のある市庁舎内(通常は当事者どちらか一方の住所地)で、市長や副市長立ち会いの下で宣誓することにより婚姻が成立し、結婚証明書が作成(フランス民法74条、75条)

結婚契約(婚前契約)について

結婚契約(婚前契約)は、結婚前に夫婦の財産、家事分担、離婚の条件などについて夫婦間で取り決める契約で、フランスに限らず、欧米では一般的なものになっています。
内容は、基本的には当事者間で自由に決められるものですが、安易に決めると後になって揉めごとに発展する可能性があり、また、取り決めた内容が法律に反して無効になることもあり得るため、どのような内容を定めるかについて、弁護士など専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

パートナーシップ制度PACS(Le pacte civil de solidarité)について

フランスでは、いわゆる事実婚(ユニオン・リーブル)の他に、通称PACS(パクス)と呼ばれるパートナーシップ制度があり、手続きの簡単さや、結婚した場合に近いメリットを享受することができることから人気の選択肢となっています。
年齢は18歳以上、異性間でも同性間でも可能で、カップルが必要書類を市役所もしくは公証人に提出すればPACSが成立します。
さらに、関係を解消するに当たってのお互いの合意は不要であり、一方が別れたいと思った時点で、登録した市役などに届け出れば関係が解消されます。相手には、後日裁判所から連絡がいくようです。

離婚事由

フランス民法では、離婚事由は次のように定められています(フランス民法229条)。

①相互の同意
②婚姻解消の方針の承認
③婚姻関係の決定的変化(原則として 1年以上の別居により認められます。)
④義務違反

離婚の方法

離婚の方法は、大きく分けて以下の2つです。

①相互同意離婚(フランス民法229条の1)
②裁判離婚(フランス民法229条)

①は、裁判所を介さないで離婚をすることができる方法で、日本の協議離婚に近い方法です。もっとも、日本と異なり、配偶者同士のみの合意では離婚することはできず、弁護士や公証人が手続きに関与します。

離婚成立までの流れ

フランスでの離婚成立までの流れについて、相互同意離婚と裁判離婚に分けて説明していきます。

相互同意離婚の流れ

相互同意離婚の流れは、以下のとおりです。

①弁護士の署名を備えた私署証書の形式の合意書の作成
②合意書を公証人に寄託(確定日付と執行力が付与されます。)

合意書には、婚姻の解消及びその諸効果(子の居所、親権行使の態様、面会交流(訪問権・宿泊権)の態様、子の養育費)への合意や、未成年子が裁判官の聴取を受ける権利について両親から知らされていること及びその行使を望んでいないことなどを記載します(フランス民法229条の3)。

各配偶者は弁護士から合意書案を受け取った日から 15 日の熟慮期間が経過した後でなければ署名することができません(フランス民法229条の4)。

なお、未成年の子がいて、かつ、その子が裁判官による審理を要求したときには、相互同意離婚の手続は利用できず、裁判離婚の手続が進められることになります(フランス民法229条の2第1号)。

裁判離婚の流れ(フランス民法229条)

裁判離婚の流れは、離婚事由ごとに多少異なります。

①相互同意(フランス民法230条、232条)
 ・両配偶者で合意書を作成
  →弁護士が申立て
  →判決で合意書の承認、離婚の言渡し

②婚姻解消の方針の承認(フランス民法233条、234条)
 ・婚姻解消の方針を承認する旨の私的署名証書の作成+弁護士の連署
  →裁判所に対する申立て
  →裁判官が離婚の言渡し

③婚姻関係の決定的変化(フランス民法237条、238条)
 ・原則として 1年以上の別居が前提
  →裁判所への申立て
  →裁判官が離婚の言渡し

④義務違反(フランス民法242条、246条)
・婚姻上の義務(尊重義務、貞操義務、救護義務、扶助義務、共同生活の義務)やその他義務違反があることが前提
 →裁判所への申立て
 →裁判官が離婚の言渡し

裁判離婚の手続きは、日本の調停離婚と同様、非公開の手続きとなっています(フランス民法248条)。

離婚の際に取り決めるべき事項

離婚の際に取り決めるべき事項は概ね以下のとおりです。

①財産分与
②離婚補償手当
③監護権
④養育費

財産分与

フランスでは、原則として共同財産制度が採られていますが、婚前契約がなされている場合はその内容に従って決定されます。

離婚補償手当

収入が少ない方の配偶者が離婚によって生活のレベルが下がらないよう、収入の多い配偶者から収入の少ない方に対して離婚補償手当という名目で金銭を支払うことになっています。
金額は原則として双方の収入を基に決定されます。

親権

離婚後も原則として共同親権が維持されます(373条の2)。
子供と同居しない親には、訪問権及び宿泊権は補償されています(373条の2の1)。実施の形態としては、平日は一方の親と同居して週末に他方の親のところで宿泊するパターンや、週毎に同居する家を交代するパターンなどがあります。
取り決めどおりに実施しない場合や、子供と同居する親が居住地を変更した場合に変更後の居住地を他方の親に告知しない場合は、制裁や刑事罰が科されることがあります。

養育費

金額は原則として双方の収入を基に決定されます。

ちなみに、フランスでは裁判離婚の手続きの中で慰謝料を請求することはほとんどなく、暴力や不貞行為については通常損害賠償請求事件として扱われます。

フランス法に精通している弁護士にご相談を

フランス法による離婚は日本の手続きと異なる点も多く、スムーズかつ不利にならないように手続きを進めるためには、フランスの離婚制度をよく理解している専門家によるアドバイスが不可欠です。
弊所では、フランス現地の弁護士と協力しながら、フランスでの離婚手続きをサポートいたします。

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