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国際離婚とお金

国際離婚とお金

国際離婚特有の問題

国際離婚とお金の問題については、どこの国の法律が適用されるかによって、結論が変わってくる可能性があります。適用される法律のことを「準拠法」といいます。以下では、日本法が適用される場合を前提として、説明をします。

1.慰謝料について

慰謝料請求における証拠の重要性

相手の浮気や暴力などによって「精神的苦痛」を受けた場合、慰謝料を請求することができます。精神的な苦痛を金額に換算して請求するものですので、請求する金額はご自身で自由に決めることができます。

慰謝料請求を行う際に必要となるのが「証拠」です。交渉を優位に進めるためにも、証拠の確保が非常に重要です。例えば、以下のような証拠があると交渉を有利に進めることができると考えられます。

  • 配偶者が浮気相手とラブホテルに入っていく写真や動画
  • 浮気相手とのメールのやり取り、SNS、電話の録音
  • 探偵による浮気の報告書
  • 医師の診断書
  • 暴力を受けた部位を撮影した写真

慰謝料額の算出方法

慰謝料の金額に明確な基準はなく、自身が感じる精神的苦痛を金額に表わして請求することが可能です。
もっとも、裁判となった場合には、慰謝料の相場は、最大でも200~300万円程度となることが多く、様々な事情によって金額は異なってきます(例:婚姻期間、子供の有無・年齢、不貞期間、交際頻度など)。過去の裁判例とも比較して、自身のケースがどれくらいの慰謝料が認められるかを把握しておくことが重要だと考えられます。

慰謝料請求の手順・方法

                                  

協議(交渉)
協議(交渉)によって慰謝料請求を行い、相手方がこれに応じる場合は、慰謝料の金額や支払方法をまとめた合意書を作成します。形式は問いませんが、現金一括でその場で払ってもらえるのでない限り、公正証書を作成しておくことが有効です。公正証書を作成すると、万が一支払いが得られなかった場合には、裁判手続をしなくても直ちに相手方の給与の差押え等の強制執行を行うことができます。
調停の申立て
離婚前の場合は,離婚調停の中で慰謝料についての話し合いをすることができます。離婚のみが先行して成立した場合には、離婚後に慰謝料の話し合いをすることもできます。
当事者間の話し合いがまとまらない場合や(対立が激しく)話し合いがそもそもできないような場合には,慰謝料について単独の調停を申し立てることができます。調停は、あくまでの裁判所を通じた話し合いです。金額以外の条件(例えば、謝罪文言を入れるなど)などを入れることができるといったメリットがある一方で、相手方が同意しない場合には、調停は不成立となり、慰謝料の支払いを受けることができません。
訴訟の提起
協議や調停をしても相手方が支払義務自体を否定する場合や金額について折り合いがつかない場合には、訴訟提起をする必要があります。訴訟提起をした場合の見通し(判決での認容額の見込みや債権回収可能性など)を検討し、訴訟をするメリットがある場合には、訴訟を提起します。
裁判で和解が成立した場合は和解調書が、判決の場合は判決書が作成されます。相手方が支払いをしない場合には、和解調書・判決書をもって、給与の差押えなどの強制執行を行うことができます。

2.財産分与について

財産分与の分類

離婚における財産分与は、それまでの婚姻生活で夫婦が築き上げてきた財産をルールに従って分ける作業です。財産分与の目的は、それまで夫婦が協力して築き上げてきた財産を公平に分配することです。以下のとおり、財産分与の性質としては、大きく3つに分類することができますが、必ずしも截然とこの3つを区別することができるわけではありません。

清算的財産分与
清算的財産分与とは、結婚期間中に夫婦が協力して築いた預貯金や不動産・有価証券などの財産を分与(原則としてその割合は50%ずつ)することをいい、財産分与の多くはこの「清算的財産分与」にあたると考えられます。
扶養的財産分与
離婚することで夫婦のどちらかの生活が苦しくなる場合は、「扶養的財産分与」という形で生活能力のある一方当事者が他方の生活水準を維持できるように多めに財産を分与することがあります。これを扶養的財産分与と言います。
例えば、妻が無職(専業主婦)であり、かつ、年齢も高齢で今後の就労が見込まないような場合、あるいは、配偶者が病気で就労できないような場合には、扶養的財産分与の側面を考慮して、分与額を決めることがあり得ます。
なお、海外の一部の国では、離婚後も当事者の一方が元配偶者の生活費を負担するという制度を持つ国(アリモニーと呼ばれたりします。)がありますが、現在の日本ではそのような制度はありません。扶養的財産分与は、制度の欠陥を保管する意味を持つものとも言えるでしょう。
慰謝料的財産分与
金銭以外の家や土地などの財産を慰謝料の代わりに分与することを慰謝料的財産分与といいます。慰謝料的財産分与が本来の慰謝料の額に相当するのであれば、それ以上慰謝料を払うことはありませんが、足りなければ別途金銭によって慰謝料を支払う場合もあります。

財産分与の対象となる財産(共有財産)

財産分与をする場合、財産分与の対象となる財産を確定することが必要です。

形式的共有財産
結婚後に夫婦が協力して築いた共有名義の財産です。例えば、夫婦が婚姻後に共有名義で購入した不動産が具体例として挙げられます。
実質的共有財産
日本の民法では、原則として夫婦別産制が採用されています(民法762条1項)。したがって、結婚後に夫婦の一方が単独名義で取得した財産については、その名義人の特有財産とされます。もっとも、夫婦が婚姻期間中に協力して築きあげた財産については、離婚時には、名義に関わらず、清算、分与するのが公平です。そこで、夫婦の一方の単独名義の財産についても、実質的な共有財産(夫婦が婚姻期間中に協力して築きあげた財産)については、離婚時に財産分与の対象となります。
なお、国によっては夫婦共有性が採用されている国もありますので、日本の制度との違いを理解しておく必要があります。

財産分与の対象とならない財産(特有財産)

夫婦が婚姻期間中に協力して築きあげた財産は財産分与の対象となりますが、他方でそれ以外の財産は財産分与の対象とはなりません。これを「特有財産」と言います。
特有財産の具体例としては、「夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産」や「婚姻期間中に得られた財産であっても夫婦の協力とは無関係に取得された財産(片方が相続・贈与で得た財産、別居後に得た財産など)」が挙げられます。

財産分与の算出方法
財産分与の割合は、原則として夫婦双方の収入の多寡にかかわらず、半分ずつとする考えが実務上は取られています。もっとも、ケースによっては、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度を考慮した上で、分与割合を修正(例えば、60%と40%)することもあります。夫婦の収入の多寡にかかわらず半分を分与すべきという実務上の取扱いは、夫の稼ぎは主婦である妻の支えの上に成り立っているという考え方が根底にあるものと考えられます。

財産分与の請求の手順・方法

協議(交渉)
財産分与の協議方法としては、対象財産を整理してその評価額を出した上で分与する財産や金額を決定する方法もあれば、対象財産を整理しないまま、希望額に基づいて金額を決定する方法もあります。
合意ができれば、合意書または公正証書を作成します。
調停
離婚調停の中で財産分与の内容を決める方法があります。調停で話し合いがまとまらず不成立となった場合は、別途離婚訴訟の中で財産分与を求めていくことになります。
また、離婚が先行した場合でも、離婚後2年以内であれば、財産分与についてのみ調停を申し立てることが可能です。調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が当事者双方から提出された主張と証拠を基に裁判所が適切と考える分与額を決定して審判を下します。
審判
財産分与の調停で話し合いがまとまらず不成立となった場合、裁判所が、双方の主張と根拠資料を基に、適切な分与額を決定して審判を下します。
訴訟
財産分与を含む離婚調停が不成立となった場合は、別途訴訟で財産分与を求めていくことになります。大部分の事件では、訴訟の途中で和解が成立します。和解が成立しない場合には、裁判所が当事者双方の主張及び提出された証拠資料を基に、適切な分与額を判断して判決を下します。

財産分与を求める際のポイント

財産分与を求める場合、まずは対象となる財産を確定することが必要です。対象財産の確定ができない限り、分与を求めることができないからです。

相手方名義の財産を把握する
相手方名義の財産がどこにどれくらいあるかを把握することは非常に重要です。離婚を切り出した後、別居を開始した後では、相手方に財産を隠されてしまう可能性があり、正確に財産を把握することが難しくなります。同居している間に相手方名義の財産を可能な限り把握しておくことで、財産分与を有利に進めることができるでしょう。給与明細、預金口座の番号、不動産の所在地など、財産の特定のために必要な情報は、写真撮影をするなどして、できる限り正確に記録しておくことが有益です。また、郵便物などにも財産特定の手がかりとなる情報が記載されている場合がありますので(例えば、証券会社から書類が届いていれば、株、投資信託などの有価証券を持っている可能性があることが分かるでしょう)、こまめに確認しておくことをおすすめします。

3.婚姻費用・養育費について

婚姻費用・養育費の金額は主に裁判所が公表している算定表の基準に基づいて決定されますが、いつ申し立てを行うか、どのように話し合いをするかによって受け取ることのできる金額が変わることがあるため、状況にあった戦略を立てることが重要です。
以下では、婚姻費用・養育費の算出方法や相手方が婚姻費用・養育費を支払わない場合の対応方法などについて解説します。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、別居中の夫婦の間で、夫婦や未成熟子の生活を維持するために必要な費用のことです。また、養育費とは、夫婦が離婚した後に未成熟子の生活を維持するために必要な費用のことです。
婚姻費用・養育費には、衣食住にかかる費用、交際費、医療費、子供の教育費などが含まれます。

請求ができるタイミング

同居中・別居後にかかわらず、請求することが可能です。

支払いを受けることができる期間

婚姻費用は「請求したとき」(実際は、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てた日の属する月から)から「離婚が成立するまで」あるいは「再び同居するようになるまで」支払う必要があります。
養育費は、離婚が成立した日の属する月、あるいは、「請求したとき」(実際は、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てた日の属する月から)から、子が成人(18歳)に達するまで支払う必要があります。ただし、子が成人に達した後も未だ自立していない場合には、養育費の請求が認められることがあります。例えば、子が大学、大学院に通学していて親からの援助を必要としているような場合には、養育費の請求が認められることがあります。

婚姻費用・養育費の算出方法

婚姻費用・養育費の金額について話し合いがまとまらない場合や、相手方が話し合いに応じない場合には、裁判所に調停または審判を申立てることになります。

婚姻費用・養育費算定表
婚姻費用・養育費の支払いがなされるか否かは、支払いを求めている当事者にとっては死活問題です。事件が長期化することを回避し、早期に金額を確定する必要があります。そこで、実務上は、裁判所が公表している婚姻費用・養育費算定表の基準にしたがって、金額が算出されるのが一般的です。
住居費相当額
住居費相当額は、一般的にイメージする家賃とは異なり、支払い義務者の年収によって決まる金額です。住居費を100%義務者が負担している場合に、婚姻費用から住居費相当額分が減額されます。
算定表に記載がない場合
算定表では、義務者の年収の上限は2,000万円となっています。したがって、義務者の収入が2,000万円を超えるような場合には、算定表の記載から一義的に金額を算出することはできないため、どのように婚姻費用・養育費の金額を算出するかが問題となります。
一方では、上限は2,000万円であり、義務者の年収が2,000万円を超えるような場合でも年収は2,000万円であると擬制して金額を算出すべきであるという考え方があります。他方で、2,000万円を超える場合には、それに応じた婚姻費用・養育費を決めるべきであるとする考え方があります。裁判所の判断も明確には決まっていないようですが、近時の裁判実務では2,000万円を上限とはせず、それ以上の場合には、夫婦のこれまでの生活状況などを踏まえて金額を決定するという対応がとられることが多いようです。

婚姻費用請求の流れ

協議(交渉)
婚姻費用・養育費についても当事者間の協議(交渉)によって決定することができます。双方の収入を出し合い、算定表に基づいて金額を定める場合もあれば、それにとらわれずに金額を算出することも可能です。
協議がまとまった場合には合意書を作成します。公正証書にしておけば、支払いが滞った時に強制執行をすることが可能です。
調停
相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所へ、書面で申立てを行います。調停では、申立人と相手方がそれぞれの生活や収入の状況、妥当と考える金額やその根拠などについて協議を行います。必要に応じて、裁判官の意見を求めることもできます。
必要書類は、申立書、夫婦の戸籍謄本、申立人の収入資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細等)です。申立時に、収入印紙1,200円分と所定の連絡用切手を納めます。申立書の書式や、切手の金額・枚数などは各家庭裁判所のホームページなどで確認することができます。
審判
調停における話し合いがまとまらない場合には、調停は不成立となり、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が当事者双方の言い分及び提出された証拠をもとに婚姻費用・養育費の金額を決めて、審判を下します。
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