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国際離婚の方法

国際離婚の方法

公開日
2018/12/13  情報更新日 2024/9/6
基礎知識

国際離婚とは

国際離婚とは、当事者の一方が外国人である場合あるいは当事者の双方が日本人であっても外国に居住していたり、夫婦の財産が海外にあるなど、渉外的要素を含む離婚事件(渉外離婚事件)のことをいいます。
渉外離婚事件は、どの国に裁判管轄権があるのかという国際裁判管轄の問題、どの国の法律に従って離婚の効力を判断するかという準拠法の問題など、検討すべき問題は多岐に渡り、専門的な知識を必要とする、対応の難しい分野です。

国際離婚の方法

国際離婚をする方法としては、以下の4つが考えられます。

① 協議離婚
② 調停離婚
③ 審判離婚
④ 裁判離婚

離婚について相手方が同意している場合には、①の協議離婚によることが簡便です。ただし、協議離婚制度を持たない国ではその効力が認められない可能性があるので注意する必要があります。
協議離婚が成立しない場合には、②ないし④の方法をとる必要があります。

国際離婚の裁判管轄(日本で離婚裁判をすることができるか)

(1)国際離婚の裁判管轄の考え方
渉外離婚事件の国際裁判管轄について、これまで日本の法律上は明文の規定が存在せず、その決定は解釈に委ねられていました。
しかし、2019年4月1日施行の人事訴訟法及び家事事件手続法の改正により明文化され、かなり広い範囲で、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められることとなりました。
離婚の訴えについては、以下のとおり、人事訴訟法3条の2第1号・5号・6号・7号等により管轄が判断されることになります。
① 被告の住所、それが知れないときは居所が日本国内にあるとき(1号)
② 当事者双方が日本の国籍を有するとき(5号)
③ 当事者の最後の共通の住所が日本国内にあったとき(6号)
④ 原告が日本に住所を有しており、かつ
④-1 被告が行方不明であるとき(7号)
④-2 外国の裁判所での離婚判決が日本国内で効力を有しないとき(7号)
④-3 その他特別な事情があるとき(7号)
以下、③と④の場合について詳しく説明します。

(2)当事者の最後の共通の住所が日本国内にあったとき(上記③)
これは、夫と妻の最後の共通の住所(婚姻生活地)が日本国内にある場合をいいます。仮に婚姻生活地ではなく、夫または妻がそれぞれ日本国内に住所を有していた過去があり、訴え提起時には他方が帰国しているような場合には、「共通の住所」が日本にあったといえるかは、解釈論上問題のあるところです。

(3)被告が行方不明であるとき(上記④-1)
被告が行方不明であることを証明するためには、次のような資料を収集して、裁判所に提出することが考えられます。
ア 原告本人の陳述書
イ 被告の出入国履歴
ウ 被告の本国の住所地から不送達により返送された手紙

(4)その他特別な事情があるとき(上記④-3)
これは、個別の管轄原因には当たらないものの、特別な事情がある場合に国際裁判管轄を認めるものです。従来の実務の考え方によれば、相手方が一方的に本国へ帰国して遺棄された場合や、配偶者から外国においてDVを受け、日本に逃げ帰ってきたような場合には、特別な事情があるとして、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる可能性があります。
ある事件が個別の管轄原因に該当しない場合でも、日本での訴訟提起が特段の事情に該当する可能性があれば、訴訟の提起を試みることも十分に考えられます。
また、今回の改正においても導入されなかった規定として「合意管轄(相手方との合意により任意に裁判所を定めること)」と「応訴管轄(管轄のない裁判所に訴えが提起されたが、相手方が管轄を問題とせず訴訟に応じた場合に管轄が発生すること)」があります。離婚等の身分関係事件は、国内管轄についても専属管轄とされており、公益的要素が強いので当事者主義が制限されています。そのため、日本に国際裁判管轄がないのに、当事者が日本の裁判所で手続きを行うことを合意していることや、被告が応訴したということのみに基づいて、日本に国際裁判管轄を認めることについては実務では否定的に考えられています。

(5)離婚調停における国際裁判管轄
日本では、調停前置主義が採られており、離婚裁判の前には原則として離婚調停を経なければなりません。離婚調停は、以下の場合に日本の裁判所が国際裁判管轄を有します(家事事件手続法第3条の13)。
① 離婚訴訟の管轄が日本の裁判所にあるとき(1号)
② 相手方の住所、それが知れないときは居所が日本国内にあるとき(2号)
③ 当事者が日本の裁判所で離婚調停を行うことを合意したとき(3号)
離婚訴訟とは異なり、離婚調停においては、当事者の合意があれば国際裁判管轄が認められます。これは、離婚の合意をしていても外国で離婚を承認してもらうために、協議離婚ではなく調停離婚を選択する必要がある場合などに活用することができます。

(6)離婚後の親権
離婚後の親権の指定に関して、改正人事訴訟法では、日本の裁判所が離婚訴訟について管轄を有する場合には、親権者の指定についても管轄を有するとされています(法3条の4,1項)。そして、日本では、子の本国法と両親の一方の本国法が日本法である場合、単独親権を採用する日本民法が適用され、離婚裁判の際に両親のどちらか一方を親権者と決めなければなりません。これに対し、諸外国の法律では離婚後も原則として共同で親権を行使するとされることが多く、どの国で離婚裁判を行うかを検討するにあたっては、そうした事情も慎重に考慮に入れる必要があります。

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