国際離婚の準拠法
- 公開日
- 2018/12/19 情報更新日 2024/9/26
国際離婚の準拠法
国際離婚の準拠法(どこの国の法律が適用されるか)
国際離婚の準拠法については、離婚自体についてと、離婚にまつわる財産分与、養育費、親権について、必ずしも、同一の準拠法になるとは限らず、以下のとおり、それぞれについての準拠法を検討する必要があります。
国際裁判管轄と準拠法の検討順序については、国際裁判管轄を先に検討する必要があります。日本に国際裁判管轄が認められないのであれば、日本の法律の一つである通則法の適用が問題となることもないからです。
【国際離婚の準拠法】
渉外離婚事件の準拠法については、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)に定めがあります。通則法27条によると、国際離婚の準拠法は、次のように規定されています。
① 夫婦の本国法が同一であるとき⇒当該本国法
(例:中国人夫婦の離婚⇒中国法)
② 夫婦の本国法が同一ではなく、夫婦の常居所地法が同一であるとき⇒当該常居所地法
(例:日本在住の中国人夫と韓国人妻の離婚⇒日本法
③ 夫婦の本国法が異なり、常居所地法も異なるとき ⇒夫婦に最も密接な関係がある地の法律
(例:日本在住の韓国人夫とアメリカ在住のアメリカ人妻、日本で知り合い結婚し、長年日本に居住していたが妻がアメリカに帰国して離婚を求めた⇒日本法)
④ 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人⇒日本法
【財産分与の準拠法】
財産分与の準拠法については、離婚に伴う財産給付の問題として、離婚の準拠法によるというのが裁判実務です。
【養育費の準拠法】
養育費については、「扶養義務の準拠法に関する法律」により適用法を決めます。同法2条によると、養育費の準拠法は、次のように規定されています。
① 原則、子どもの常居所地法
② 子どもの常居所地法では養育費をもらえない場合⇒当事者の共通する本国法
③ 子どもの常居所地法でも、当事者の共通する本国法でも、養育費をもらえない場合⇒日本法
【親権の準拠法】
親権の準拠法については、通則法32条によると、次のように規定されています。
① 子どもの本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡・知れない場合には、他方の本国法)と同一である場合には、子供の本国法
② その他の場合には子どもの常居所地法
【多重国籍者の場合の本国法の考え方】
多重国籍者の場合の本国法の考え方については、通則法38条によると、次のように規定されています。
① 国籍国のうち常居所を有する国がある場合⇒その常居所地法
② 国籍国のうち常居所を有する国がない場合⇒最も密接な関係がある国の法
ただし、国籍国のうちに日本国籍がある場合は、日本法を本国法とするとされています
外国での離婚判決の日本における効力
(1)外国で離婚判決を取得した場合、その効力が日本でも認められるかについては、民事訴訟法118条の規定によって判断されます。同法によると、次の4つの要件をすべてみたす場合には、外国判決が有効であるとされています。
① 法令・条約により当該外国裁判所に裁判権が認められること
② 敗訴した被告が訴訟の開始に必要な呼出し・命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと、または、これを受けなかったが応訴したこと
③ 判決の内容及び訴訟手続が日本の公序良俗に反しないこと
④ 相互保証があること
(2)効力が認められない場合の具体例
以下のような場合には、外国離婚判決の効力が日本では認められない可能性があると考えられます。
① 被告である日本人が日本に居住しているにもかかわらず、呼び出しその他もなく一方的に外国で離婚判決が出された場合(①、②の要件を満たさない可能性があります)
② 裁判書類の送達が私人による直接郵便送達であった場合(②の要件を満たさない可能性があります)